2018.12.25 Tuesday
高気密・高断熱は暖かいという幻想
『高気密・高断熱』という言葉が付いている住宅にどんなイメージを持ちますか?
多くの方が、『暖かい』とか、『光熱費が安い』という感覚を持たれているかと思います。
特に、『暖かい』に関しては、家中どこも温度差がなく暖かいイメージですよね。
印象操作という言葉がピッタリなことが現実にたくさん起こっています。
そう感じた先日のこと。
住宅情報誌の営業さんとお話をしていた時のこと。その方は現在、住宅の建て替えを検討しているとのこと。
残念ながら他県にお住まいの為、オースタムの建築範囲外だったのですが、
「図面を見て、アドバイスが欲しい。」とのご相談をされて、図面を拝見させていただきました。
図面を見ると、とっても素敵な建物。
LDKもとっても広く、吹き抜けとリビング階段が。
吹き抜けは2階の大きなブックスペースまでつながっていて、
玄関から、シュークローク、ファミリークローク、そしてLDKまで一体の空間。
室内干し専用の個室もあります。
すごく使いやすそうで、動線も短くなりそう・・・・
『全館空調』であればですけど。
『高気密・高断熱』を謳っている建築会社はどの地域にも、ハウスメーカー、地域工務店問わず山ほどあります。
しかし、『全館空調』や、『全館冷暖房』といった言葉を標準的に使っている家は、ごく一握り。
もちろん、『高気密・高断熱』なら『全館冷暖房』なんて当たり前じゃないか!!として表示していない、
意識の高い建築会社もあるとは思います。
それでも多くは、『表示しない』のではなく、『表示できない』んです。
近年、住宅のプランはオープン化の一途をたどっています。
上で相談を受けたプランも、水回りと個室以外はほぼオープンな間取り。
エアコンの設置場所はリビングに、これがQ値が1.0を超えるレベルの建物であれば、自然対流で全館暖房可能ですが、お聞きした断熱仕様では不可能かと・・・
生活をイメージすると、暖気は2階に上がってしまい、1階の足元は寒くなり、動線を短くしようと作ったファミリークロークも、着替えを取るだけで、エアコンのあるリビングまで持って来ないと着替えられない、そのあとパジャマはどこへやら・・・
エアコンで暖房をする場合、風の流れ(気流)による対流で建物を暖めます。
半端な『高気密・高断熱』だと、気流が届かない場所まで暖めることができません。
軽くなった暖気も上に昇りっぱなしになります。
空気が家の中全体に行きわたる『仕組み』が必要です。
結果、『全館空調』、『全館冷暖房』になるんです。
現在、『高気密・高断熱』を掲げるのは超カンタン。
ここからが高気密という基準がないので言ったもん勝ちです。
だから、いまどき『高気密・高断熱』と書いてあるだけでは、『暖かい』家と判断できなくなりつつあります。
『高気密・高断熱』の家が欲しいのではなく、本当は『いつ、どの部屋に行っても』『暖かく』『涼しく』暮らせる家が欲しいんですよね。
『高気密・高断熱』という言葉は付いていて当たり前、
『全館空調』『全館冷暖房』で
『想定室温が何℃』で、
『光熱費のシュミレーション』ができる位でないと、
温度差のない暖かい暮らしに辿り付きません。
安易な『高気密・高断熱』にお気を付けくださいね。
ちなみに余談ですが、
半端な気密・断熱で屋内に物干し部屋を作ると、結露 → カビカビ との戦いになります。
また、物干し部屋の空気循環を考えておかないと、空気が動かなくなり、洗濯物にニオイが・・・
となりますので、注意が必要です。
『空気循環』・『湿度調整』も家づくりには重要な要素です。
hiroyuki